「君の名は。」が教えてくれる、これからのセカイでの戦い方
2016年もあと3日。
超話題作の「君の名は。」を、ようやく観てきました。
地方都市の小さな劇場、最後列。
隣の席で高校生カップルがキスしまくってるなか、
一人で観てきましたとも。
■いわゆる「セカイ系」作品の真髄
新海誠監督の作品は、「セカイ系」と呼ばれるもので、「主人公とヒロインの二人の愛があれば、セカイを救える」というのが基本的な流れです。
社会との関わりなしに、自分たち(主人公とヒロイン、仲間たち)でなんとか課題を解決してしまう。
「君の名は。」も、もちろんこの流れを踏襲していて、後半とくにそのテイストが強くなります。
※以下、濃厚なネタばれを含みます。
今回の作品では、
「主人公(東京のイケメン男子)と入替わっていたヒロインの過ごす田舎に、彗星の破片が落下。ちょうど開かれていた夏祭りの会場付近に落ちたため、住民のほとんどが死んでしまう」
というのが、「セカイの危機」として描かれています。
主人公との入替わりを通じてこのことを知っていたヒロインは、なんとかして住民を、事前に避難させようとするんですが、これがなかなか簡単ではない。
もちろん映画なので、最後は全員避難できるんですが、そこにいたるまでのプロセスに、セカイ系の真髄、これからの社会での生き抜き方を教えられた気がしました。
■現代社会の縮図を感じるワンシーン
主人公はまず家族(祖母と妹)に、「隕石が落ちてくるから避難して!」と訴えますが、当然ながらまともに取り合ってもらえません。
そりゃいきなりそんなの言われても、信じられないですよね。
町長をやってる父親にも避難を呼びかけるようお願いするんですが、こちらにいたっては病院で診てもらうように言われる始末。
こちらも当然な話ではあるんですが、ここに現実社会の縮図を感じました。
それは、「若者が感じている危機感に対して、オトナたちは動いてくれない」というもの。(じっさいは動いてくれる人もいるんですけどね)
「自分たちだけが知っている危険な未来(隕石の落下)」に対して、「安全なエリア(校庭)へ住民をどう移動させるか」というのがここでのプロジェクトです。
ただ、自分たちは高校生で、オトナたちは動いてくれない。
ここから、「セカイ系」の本領が発揮されます。
■すべてはゲリラ戦
求める成果のためなら、それがセカイを救うものであるなら、なんでもやってOK。
ヒロインたちは驚きの行動に出ます。
①町の変電所を爆破
ヒロインの友人Aは土建屋さんの息子。ダイナマイトを調達してきて、変電所を爆破します。これで町の電力は一時ダウンします。
※犯罪です
②役場の放送網をジャック、避難呼びかけ
友人Bは放送部の女の子。役場の放送網を使い、避難を呼びかけます。
※たぶんこれも犯罪です。
ここで上手いなと感じたのは
「隕石が落ちてきます」ではなく、「山火事が発生しました」と言ったこと。
そっちの方が説得力あるし、変電所爆破したから山火事も発生しますわな。
③祭りの会場で住民を煽る
避難呼びかけの後は、ヒロインと友人Aが祭りの会場に紛れ込み、
山火事が本当であるように、住民を煽ります。
※これは多分セーフ
まあ、あいだにいろいろストーリーあるんですが、だいたいこの流れで解決させてしまいます。
けっこう犯罪行為もあった気がしますが、多くの人命を救ったのでお咎めなしです。
ここから学べるのは、人を動かすにはゲリラ戦でもOKということ。
(とくに偉い人が動いてくれない場合)
明確な危機に際しては、大きな組織や権力を動かすことよりも、むしろ少数によるゲリラ戦のほうが有効な場合が多いです。
もしヒロインが父親の説得だけにこだわっていたら、何も進まなかったでしょう。
社会を動かすムーブメントはゲリラ戦から。
(ただし犯罪行為はNG)
そんな教訓を教えてくれる映画でした。